認知症

明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願い申し上げます。



晦日の話。
ぼくは毎年、父方の祖母の家ですごすことにしている。


おばあちゃんは認知症で、同じことを何回も聞いてくる。


ぼくはいつも、初めて聞いたフリをする。
そうした方がよいというのを、何かで読んだ。


デイサービスのおかげで、去年の大晦日のときよりは症状がよくなったみたい


食事のあと、おばあちゃんが、引き出しの中からおこづかいを出してぼくにくれた。
しばらくして、またごそごそと引き出しの中を探している。

さっきおこづかいをくれたのを忘れて、
「おばあちゃん今お金がないからおこづかいあげられないよ」
と悲しそうな顔をしてぼくに言った。



さりげなく、さっきもらったおこづかいを引き出しに戻しておいた。
またしばらくして、おばあちゃんが引き出しを開けた。
今度はお金が入っていて、またそれを僕にくれる。
ぼくは、おばあちゃんに気付かれないようにまた引き出しに戻した。




帰り際、またさっきのおこづかいをもらった。
帰り際におこづかいを渡せたので、おばあちゃんは嬉しそうだった。


小さい頃、おばあちゃんのウチに行ったときは、いつも帰り際におこづかいをもらっていた。
いかに物忘れがはげしくなっても、その習慣だけは忘れないおばあちゃんに、悲しくも、ありがたい思いがした。


ちょくちょく会いにくる訳にはいかないが、週に何回かはおばあちゃんに電話しようと思っている。